小学校低学年の頃、通学路の途中に農家があって、そこに、小さな豚小屋がありました。豚小屋の中には、豚が5~6匹ほどいて、僕は小屋の前に行っては、豚たちが残飯を食べる様子を、よく見ていました。
その残飯は、泥水みたいなひどい残飯で、生臭い匂いがしましたが、豚たちは、おいしそうにがつがつ食べるので、それを見ているうちに、自分もだんだん、その匂いが好きになってきました。そこで、自分もなにかエサをあげようと思いつき、近くに生えていた雑草を抜いてきて、「サラダだよ。」とあげてみると、それもおいしそうに、がつがつと食べるのです。
その農家さんに聞いた話では、「豚は、みな争うようにエサを食べる。すると、あまりエサを食べられないやつが出てきて、そいつは、欲求不満のせいで、自分のしっぽをかじっちまうんだ。だから、新しく豚を買うときは、しっぽがちゃんとあるやつを買うんだ。」どうやら、「しっぽがない欲求不満の豚の肉は、おいしくないから」らしいのです。
果たして、本当かウソかわからないけれど。
(昭和30年代中頃・神奈川県横浜市)