第85話 かわいいカイコ

 小学生の時、繭を作る授業で、クラスでカイコを飼うことになりました。私は、元々、芋虫や毛虫の類が、嫌いなんです。でも、長期休みで、誰かが世話をすることになった時、私は手を上げて、カイコを家に持って帰りました。カイコだけは、大丈夫だったんです。

 カイコを手のひらに乗せると、カイコは、ペタッペタッと、吸盤が吸い付くように、くっつくように歩きます。それが、妙に好きで、見た目は芋虫と変わらないのに、かわいいな、と思いました。カイコは、白に近いグレーの色をして、光沢のないマットな質感をしていました。私は、近所の桑の葉を取ってきて、あげました。親も、不思議に思っていたようです。虫かごに入れて、5~6匹いたと思います。普通に面倒を見て、たまに手のひらに乗せて、かわいいなぁと思っていました。

 何かの拍子に、そのカイコのことを思い出すことがあるのです。

 (昭和60年頃・神奈川県)

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