いくつだっただろう。小学校の低学年だったように思う。家族4人で名古屋の東山動物園に行ったとき、売店でひと休みすることになった。パラソルの付いたテーブルに4人で座って、瓶のコーラを飲もうとしたら、売店横の檻の中の一頭のゾウが、ウンチをしたのだ。そのウンチときたら、ものすごく大きくてものすごく臭い!僕と弟は「クセイ!クセイ!」と大騒ぎした。
でも、そのとき、母親がコーラの瓶の口に小さいストローを入れようとしていることに、僕は気がついて、びっくりして叫んだ。「沈んじゃう!沈んじゃう!」そんな小さなストロー、瓶の中に沈んじゃう!なのに、母は「大丈夫だから。」と言う。「だめだめ沈んじゃうよ!」必死になって訴える僕の頭の中はそのことでいっぱいで、ゾウのウンチのことは、きれいに消えてしまった。あんなに臭かったのに。
この動物園は何度も行ったけど、このことが、唯一覚えていること。
(昭和50年代・愛知県)