第92話 タビとナツのおはなし(2)


タビとナツは、野良猫さんが森の中で産んだ子猫たちです。カラスにおそわれていたところを人間のおじいさんに助けられて、その後、親切な家族にひきとられたのです。

 保護された猫たちは、まだまだあかちゃん猫で、うんちもおしっこも自分で出せませんでした。お母さん猫だったらなめて出ることを教えますが、それもできません。

 そこで、ママはおしりをちょんちょんとしげきして出してあげました。でも、すぐにトイレを覚えて、中でするようになりました。う~ん、タビとナツはおりこうさんだねとママは喜びました。

あかちゃん猫が新しいお家にきて1か月、夜中に何回も起きてミルクを飲ませたりおしっこをさせたり、ママもパパもくたくたでした。

だれもお留守番がいない時は、パパが満員電車に乗せて職場に連れて行きミルクを飲ませました。

会社の人たちもみんな猫が好きでしたから、笑顔で見守ってくれました。

もちろん2人姉妹も学校から帰ると世話をしました。

なんてったって小さくてかわいくてみんなのアイドルです。

「人間の赤ちゃんが2人増えたみたいね。」みんなそう思いました。タビとナツは女の子でしたので、四姉妹ですね!

 ひとつだけ心配がありました。ナツは保護される前にカラスにおそわれて、頭と鼻と口に大けがをしました。幸いにも、頭の傷はふさがりましたが、鼻と口の傷はふさがらないと獣医さんから聞かされていたのです。

ですから、ナツはご飯を食べたり息をしたりすることが不自由です。そのためか、タビよりひとまわりほど小さいのです。

でも、元気に遊んだり、ミルクもよく飲みました。

 2か月を過ぎると、少しずつ、ご飯の練習が始まりました。そして、タビもナツも無事ミルクを卒業しました。

 そんなある日、事件が起こりました。

ママが台所でご飯の準備をしていると、タビがフライパンに飛び乗り、油をなめていたのです。

「キャ~~!!」ママは叫びました。

幸いにも火はつけていなかったので、やけどはしませんでしたが、その後、台所に入れないように柵を付けました。

 しばらくして、パパはこんなことを言いました。

「これから先、タビとナツはどんどん大きくなるから、ふたりの部屋を作ろうと思う。遊び場も作りたいな。どんなふうにしたいか、意見を言ってください。」

「は~い!!」

「安心して寝れるところ、清潔なトイレ、ご飯やお水の場所、登ったり降りたり隠れたり、遊べるところ!」

 パパはさっそく材料を買いに行きました。パパとママのお休みはすべて猫たちの部屋づくりに使いました。もちろん、お姉さんたちも、お手伝いしましたよ。

やっと完成です!

世界中でこんなにすてきな猫の部屋はないと、みんなは思いました。

 そして、今日は完成記念パーティーです。お客様を呼んでいます。タビとナツを助けてくれたおじいさんです。

おーおー、お前たち、こんなに大きくなって良かったのう。お前たちが幸せになって本当にうれしいよ。

それからお前たちにそっくりな猫に会ったんだよ。おそらくお前たちのお母さん猫だと思うよ。

無事に暮らしているから心配ないと言っといたよ。

「おじいさん、猫とお話しできるの?」「できるさ、ハートだよ、ハート。」おじいさんは、笑って言いました。

タビとナツは、高い台に登ったりくぐったり、すっかりおてんばになりました。

みんなの背中やお腹ですやすや眠っている時は、赤ちゃん猫に戻ってお母さん猫を思い出しているのかもしれません。

そして、時々、大きな窓から広い外を興味深くながめているのでした。

(おわり)

※このお話は、第66話「タビとナツのおはなし」の続編です。また、実話をもとに絵本として創作されたものですので、実際とは異なります。

文章:祖母  挿絵:孫(小学6年生・女子)

(埼玉県・令和2年)

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