川近くの田んぼのある一帯を、「風林火山」と、呼んでいた。なぜなのかは知らないが、先輩がそう呼んでいたから、そこは「風林火山」なのだ。
その一帯の山側の下あたりに、決してきれいではない用水路が流れていて、ザリガニ釣りをよくやった。そのへんの棒に糸をつけて、買ってきたレバーをエサにして、巣穴の前に糸をたらし、ザリガニがはさみでエサを挟んだら、ひっぱり上げる。網は使わない。
ザリガニは家に持って帰って飼うのだが、エサをあげるのを忘れて、そのうち見るのも怖くなって、そうこうしている間に腐って、臭くなる。よくある話だろ。
その辺りに、一人で行くのは、怖かったよ。ヘビや河童がいたら怖いから。怖いところだったんだよ。ヘビの抜け殻があったり、マムシ注意の看板があったりして。
(昭和50年代後半・埼玉県)