はっきりはわからないけど小学生だったのは覚えている。授業が始まってしばらくしたら、クラスの一人が、「先生、黒板の上に何か乗ってます」って言うんだよ。先生が、「ん?」と思って見てさ、みんなも見てさ、先生がそれをつまんで降ろしたら、それがトンボだった。トンボでも、オニヤンマだった。すごい大きいのよ、オニヤンマって。当時からすでに珍しいと言われていたおっきなトンボでさ、で、かなり弱っていて、もう力なく、足をモニョモニョ動かしている感じなのよ。でね、とりあえず、それを外に逃がしてやろうってなって、先生が窓からポンっと放り投げた。けど、弱っているからまともに飛べず、下に落ちてしまった。でも、また普通に、「授業戻るぞー」ってなって、戻ったんだよね。その後、休み時間に、男子の何人かが、「大丈夫かな」って、下に降りて見に行ったみたいなんだけどさ、結局どうなったかわからない。自分は、オニヤンマを初めて見て、それ以降、見たことがない。とにかく、大きなトンボだったの。
(昭和50年代・愛知県)