夢を見た。飼い猫が、二階のベランダから落ちて、前足を骨折する夢だ。骨折したその猫が愛おしくてたまらなかった。目を覚ますと、猫はいつも通り朝の日課で、部屋の中を、にゃーにゃー、うろついていた。その話を、夫にしたら、僕なんて五階から落ちる夢を見たよ、と言う。妻である私が、ガラッと窓を開けると、猫は、部屋の中から勢いをつけてぴょーんと飛び出し、そのまま柵の間をすり抜けて、下に落ちて行ってしまった、という。あわてて下をのぞき込んだら、猫は下の庭の芝生に横になって倒れていた。ハーッと思って、猫の名を呼びながら、急いで玄関を出ようとしたところで終わる。実は、この前に現実の出来事で、知らない間にベランダに出た飼い猫が、柵をすり抜け、わずかなでっぱりを歩き、一番端の部屋のベランダまで逃げてしまったことがあったのだ。それを目撃した二人にとっては、トラウマとなった。すぐさま、柵にはヒモを張り、その後、その様なことは起きていないのだが。
(令和2年・東京都)