第14話 遺跡発掘と幼虫

遺跡発掘のアルバイトをしていた時の話です。私は、指示された場所を、指示されたとおりに、少しずつ、土を削り、穴を掘っていく作業をしていました。

土を掘っていると、虫の幼虫が出てくることが、しばしば、ありました。黒い土の中から、白いまんまるの幼虫がでてくると、まるで宝石のように見えました。土器が見つかるよりも、ずっと、胸にくるものがありました。

幼虫は、体をまるめて、すやすや寝ているように見えました。まさか、発掘されるなんて、思ってやしなかったんじゃないか、と思うと、かわいそうな気がしました。それで、幼虫が見つかる度に、敷地の端の方まで持っていって、穴を掘り、幼虫を埋め戻していました。でも、ある日、ついに、現場監督に言われました。「そんなことしても無駄だ。やめるように。」と。

私は、それからは、幼虫が出てきても、見ないようにしました。けっこう、苦痛でした。

(平成15年ごろ・東京都)

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