お父さんが、猫を拾ってきた。近所の、施設の敷地には、何匹かの野良がいて、施設の職員さんから、ぜひもらってください、と言われて、その頃、家族で新しい猫を飼おうかと、話していた時だったので、お父さんは、もらうことにしたらしい。ちょうど現れた子猫を、かぶっていた帽子のつばをもって、ひょいと、つかまえようとした。ところが、逃げられてしまった。お父さんは、がっかりしてあきらめかけたのだけれど、さっきの子猫が、ひょっこり、井戸の横から、また、顔を出した。次こそはと、もう一度、帽子をひょいとかぶせたら、今度はつかまえることができた。お父さんは、自転車の前かごに、子猫をのせて、連れて帰ってきた。
子猫は、お母さんにだけなついて、お父さんと私には、なついていない。お父さんは、どうしても、子猫をなでたくて、ひっかかれないように、軍手をしてなでようとした。でも、結局、ひっかかれた。
これは、10年ほど前のはなし。それから、子猫は、大きくなった。あいかわらず、お母さんになついていて、男の人には、威嚇します。
(平成30年・東京都)