まだクーラーが無かった夏の日の夜、すだれにくっついているカマキリを見つけました(家の隣が原っぱでした)。とても大きな、形のしっかりとした、もう大人のカマキリでした。
晩酌をしていた父は、片方の手でカマキリをつまむと、爪楊枝で、日本酒を浸し、カマキリにお酒を、飲ませました。3~4回ほど飲ませていると、カマキリの体の動きがだんだんゆっくりになり、左右に揺れ出して、ついには、爪楊枝にカマをかけ、まるで「もっとくれ」と言っているように、爪楊枝を抱えて放さなくなりました。
カマキリは気持ちよさそうで、「へー、昆虫もこうなるんだ。」と思いました。その後もしばらく、テーブルの上に置いて、父はカマキリと一緒に飲んでいました。この一件は、小学校の夏休みの日記に書きました。
(昭和47・48年頃・東京都)