イワシのこんか漬け、というものがある。おふくろが、よく作っていた。春、たくさんのイワシを買ってきて、臓物をきれいに取り、塩漬けにし、そのあと、ぬか漬けにし、発酵させる。
食べ物が少なくなる冬になると、秋に収穫した根菜を(わらで室を作り土をかけて保存しておいたもの)千切りにし、イワシのこんか漬けをほぐしたものと合わせて、鍋でぐつぐつ煮込む。味付けは、酒かすと味噌と、こんか漬け自体の塩っけ、だったんじゃないかな。えんなか(囲炉裏)で湯気をたてるそれを、みんなでつまんで食べるのは、なんともうまかった。この料理は、「かぶし」と、呼ばれていた。母の里からもってきたものらしい。あれ以来、食べていない。今食べてみたら、どうだろうか。
(昭和20~30年代・石川県)