幼い頃に住んでいた町は、山もあって川もあって、スキーもスケートもできて、小さな場所だったけど、私は好きだったのよ。
3才のころ、あそびの帰り道、午前中だったかなあ、雪が積もっていて、そしたら、雪の上から、ぴゅーぴゅーぴゅーぴゅー鳴いている声が聞こえて、なんだろうと思って見たら、小さな生き物がたくさんいるのを見つけたの。薄いグレーで、子どもの目で見て5センチ位の大きさのものが、たくさん。私は、とっさに、これは死んじゃうよ!かわいそうだよ!と、思って、雪ごと抱え込んで、家に持って帰ったの。家に帰って、玄関に着いたとたん、そのまま、ごんっと置いて、「おかあさーん、ワンちゃんが、いっぱーい!」と、叫んだら、それを見たお母さんが、ギャーっと飛び跳ねて、「あんた!それ、ネズミだから!早く捨ててきてー!!」って、怒鳴ったの。仕方なく、元の場所に捨てに行ったけど、その後もずっと心配で、次の日、見に行ったら、跡形もなかったの。
母親のあんな顔を見たのは、初めて。あの時の顔は、今も覚えていて、思い出すと、笑っちゃう!メガネから目が飛び出すんじゃないか、ってくらい驚いていて、怒るというより、勘弁して~!ってかんじ! でも、やっぱり、犬だったと、私は思うのだけれど。…なんだったのかしら?
(昭和30年代・北海道)