本13 「猫光線」

猫光線(武田花・2016年初版・中央公論新社)

媚がない。作者である武田花さんも、写っている猫たちも。

「怪しいものじゃございません。なんかおいしい物、面白い景色、立派な猫のいる所、この辺にありませんかしら?」心の中で言いながら、町中を歩き回っている武田花さんは、1990年に木村伊兵衛賞を受賞した写真家さんで、町並みと共に野良猫を撮影し始めた先駆けとも言える存在です。また、エッセイも、独特な世界観で、嗅覚の鋭さか、そもそものお人柄ゆえなのか、なぜこの様な変わった出来事(人たち)に出会えるのか、きっと物怖じしない眼をお持ちだからじゃないかしら…と思うのです。このフォトエッセイの中では、猫への誉め言葉として、可愛いではなく「立派な猫」というような表現を使っていて、写真に写っている猫たちも堂々と、一匹の個であることを意識させます。

こちらの本はコンパクトサイズなので、もっとがっちり武田花の世界観が堪能できる写真集やエッセイ集もお勧めです。べったりしていない世界観がワクワクしてすっきりして。今と外れた様な景色や人や立派な猫たちが、一般の価値とは別の豊かさを持っていることに、安心します。

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