第116話 蛍

中学2年生の夏休み、同級生から毎年帰っている母親の田舎に行かないかと誘われて一緒に行ったんだよね。そこには他の親族も帰って来てて、夜になるとお墓参りに行こうってなったのね。

でね、提灯とろうそくを持ってお墓まで、田んぼのあぜ道を通ってみんなで歩いて行ったの。するとね、その田んぼにね、蛍がいっぱい飛んでるの。

お墓参りを済ませたあとは、帰りに提灯に火を入れるの。ろうそくに火をともして。その提灯を一人ひとつ持って帰るのだけど、火が消えると御先祖様が道が分からなくなって、ついて来られなくなっちゃうからって、一生懸命火を消さないように歩いて帰ったの。

でも蛍が周りにいっぱいいるから、捕まえようってなってその何匹かを捕まえてビニール袋に入れて持って帰ったの。家に帰ってその蛍の入った袋を箪笥の上か柱のフックにかけるかなにかして、その後、寝ましょうってなって布団に入って灯りを消して、しばらくするとその袋から蛍が逃げ出して家の中を光りながら飛ぶわけ。

でも、僕らは捕まえないで、蛍逃げちゃったねって、その蛍が部屋の中を光りながら飛ぶのを眺めていたの。そしたら、いつのまにか眠くなって寝ちゃった。

朝起きたら蛍がもうどこにいるのか分からなかったよ。

(千葉県・昭和50年代)

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