Nちゃん家はクーラーがある様なお金持ちで、シーズー犬と灰色のでっかい猫を飼っていました。私たちはその猫を、よさたろう、と呼んでいました。Nちゃんは、「やめてー、そんな名まえじゃないよー」と、言ってましたが。
よさたろうは、私たちが遊びに行くと、サーっと、どこかへ逃げていきます。そして、そのまま姿を見せません。
ところが、夜、Nちゃん家のお風呂場を借りようとすると、よさたろうが、風呂ぶたの上に、いるのです!そこで、私は「よさたろう、どいてください。」と、お願いをします。でも、よさたろうは、こちらをじろりと見て、ぷいっと知らん顔します。仕方なく、私は、Nちゃんを大声で呼びます。しばらくすると、Nちゃんがやってきて、よさたろうは、ひょいと、連れていかれます。
今、思い返すと、風呂ぶたの上には、なんだかいつも、よさたろうがいたような気がします。
(昭和50年代・東京都)