第5話 よさたろうと風呂ぶた

Nちゃん家はクーラーがある様なお金持ちで、シーズー犬と灰色のでっかい猫を飼っていました。私たちはその猫を、よさたろう、と呼んでいました。Nちゃんは、「やめてー、そんな名まえじゃないよー」と、言ってましたが。

よさたろうは、私たちが遊びに行くと、サーっと、どこかへ逃げていきます。そして、そのまま姿を見せません。

ところが、夜、Nちゃん家のお風呂場を借りようとすると、よさたろうが、風呂ぶたの上に、いるのです!そこで、私は「よさたろう、どいてください。」と、お願いをします。でも、よさたろうは、こちらをじろりと見て、ぷいっと知らん顔します。仕方なく、私は、Nちゃんを大声で呼びます。しばらくすると、Nちゃんがやってきて、よさたろうは、ひょいと、連れていかれます。

今、思い返すと、風呂ぶたの上には、なんだかいつも、よさたろうがいたような気がします。

(昭和50年代・東京都)

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