第8話 ダックスフンドと記憶

ある日、母親が、私が子どもだった頃の写真を見せてくれました。そこには、3才の私とダックスフンド、後ろには外国製のドラム式洗濯機が、写っていました。

私の母親は、ハイカラな人で、新しもの好きでしたから、当時めずらしかったドラム式洗濯機があったのだろうと思います。ダックスフンドも、当時としてはめずらしかったと思います。でも、私には、このダックスフンドの記憶がありません。

母に聞くと「近所の知り合いの子どもが、10円玉を誤って飲み込んで亡くなってしまったの。それで(ダックスフンドの)メリーちゃんは、その家にもらわれていったのよ。」とのことでした。だから、メリーちゃんは、そのまま行ったきり、私の記憶には残らなかったのです。

(昭和40年代・東京都)

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