第9話 幸運を呼ぶ猫の絵

私は、今、その猫を、凝視している。その猫は、豊かな毛並みと、まんまるな金色の瞳を持ち、どこから見ても目が合うように描かれている。

この幸運を呼ぶ猫の絵は、兄が職場からもらってきて、もうだいぶ前から、実家の棚の上に置いてある。私が「なにか効果はあった?」と聞くと、「特にない。特に、何も起こらなかった。」と、親は答えた。変わりがないことはなによりだと、私は思った。

(平成30年・埼玉県)

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA