ある日を境に、友人の庭先に、猫が現れるようになった。
張り紙の迷い猫にそっくりだったので、連絡をしてみたところ、やはりその通りであった。早速、飼い主が駆けつけてきたが、どうやってもつかまらない。
猫の飼い主は、猫の保護施設のスタッフであった。新しい飼い主へ手渡そうとしたその時、猫はするりと逃げてしまったらしい。
どうしてもつかまらない猫について、スタッフはさんざん議論をした。そして、猫のいついたこの庭に、通ってくることになったのである。
スタッフの二人は、電車に乗って交互にやってくる。雪の日も、真夏日も、台風の日も、やってくる。えさを補充し、猫の様子を見、たまに友人と話したりする。友人の許可を得て、小さなえさ用の小屋も作った。
そうして、冬も越した。夏も越した。友人は、毎日でなくても、と、言っているのだが、二人は今日もせっせとやってくるのだ。
猫は、塀の上で、座っている。ぬしの様な顔をして。
(平成30年・埼玉県)