第40話 セミとり・クモの巣編

ヒゴで小さい輪っかを作り、竹竿の先にくくりつける。これを、でっかいクモの巣につっこんで、ぐるぐる回し、綿あめみたいに、クモの糸を巻きつける。それを使って、木にとまっているセミを、ぺたりとくっつけて、とる。クモの糸は、柔らかいから、セミを傷めることなく、捕まえることができる。

クモの巣は、できたての午前中のものが良い。べたべたと粘り気がある。逆に、日があたった午後の巣は、乾燥していて、使い物にならない。だから、セミとりは、午前中が勝負だ。クモの巣は、いたるところにある。垣根とか、木と木の間とか、屋根から木にかけてとか、朝日に照らされて、水滴のついた糸が、光ってよく見える。僕ひとりか、近所の友達とふたりか、うまいことクモの巣を巻き付けたら、やぶの中へ、セミをとりに行く。

このしかけは、セミに逃げられてしまうことも多い。巻きつけたクモの糸が使えなくなったら、この日はもう終わりだ。先っぽの輪っかを取り換えて、次回また、使う。

(昭和20年代・石川県)

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