本20 絵本の国のぬいぐるみ

「絵本の国のぬいぐるみ」原優子/平成21年初版/白泉社

この手芸本を眺めていて、ふと考えました。絵本の主役に動物が多いのはなぜなんだろう。当たり前すぎることでもありますが、調べてみると、京都大学の矢野智司教授の論考を見つけました。

ちょっと堅い話になりますが、どうやら…

絵本に動物が多く登場する理由は、読者である子どもが、動物と出会うことで「人間になる」とともに「人間を超えた存在になる」ことができるから、ということらしいのです。

1.【人間になる】

「動物という存在」は、その特性の差異によって「人間という存在」を照らし出してくれる。それにより「人間らしさとは何か」を知ることができ、これが「人間になる」ことの手助けとなる(人としての発達)。

2.【人間を超えた存在になる】

「動物」は、世界と一体化している「生命そのもの」であり、子どもが絵本を通して「動物」となる体験は「生命」に触れる体験となる。それは生きる喜びと不思議を感じることでもある。(子どもはまだ定まっていないため、ネズミならネズミそのものになり、人を超えて世界に溶けることができる)。

もしかしたら、動物をペットとして飼うことも含め、多くの動物との関りは「人間とは何か」「世界とは何か」を経験するためなのかもしれません。人はひとりでは生きられないように、カテゴリーとして「他者」である「動物」がいなければ、人類は世界にひとりぼっちとなって、その孤独は深いものになるのではないでしょうか。

私自身、絵本ではありませんが児童文学をよく読んでいました。児童文学も、動物や動物のような架空の存在が出てきますが、今思えば、それらの登場で世界の豊かさや広がりを感じていたような気がします。お話の中の冒険にワクワクしたのは、人だけの世界ではない未知の生きものたちが生きる世界を、自分も人間とは少し違う存在となって経験することができたからではないか…と思ったりします。

そんなことを考えながら、ぐりとぐらの笑顔を見ていると奇妙な気持ちになります…

興味のある方は、ぜひ下記の論考や書籍をお勧めします。私も読んでみたいのですが、書籍の方は絶版でしたので図書室で借りれたらなと考えています。

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矢野智司教授の論考 ⇒ 011_kokoronomirai-vol.6_04・12_data.indd (kyoto-u.ac.jp)

矢野氏著作の書籍 ⇒ 動物絵本をめぐる冒険 – 株式会社 勁草書房 (keisoshobo.co.jp)

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