星野道夫さんの写真や文章は、とても静かな空気を持っている。きっと、耳を澄まして自然の音を聴き、あたかも動物たちと同じ目を持って眺めているからではないか、そんな気がしました。
この絵本も、初めから最後に至るまで、森の音が聞こえてくるようです。そこには苔むした木々があり、クマたちが歩き、サケは川を埋め尽くし、かつて住んでいた人々の物語の痕跡《トーテムポール》がありました。
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ここは人の住む場所とは、遠く離れた世界です。
(本書より)
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星野道夫さんはいつでも、遠い場所へと連れて行ってくれる人です。日本の片隅で今この本を私はめくりながら、頭の中の想像の世界では静かな森の中を歩いているようです。
この本が出版されたのは約30年ほど前になります。それから、私たちは何をしてきただろう。この物語の舞台である南アラスカの原生林は、現在もあの時と同じ姿でいるだろうか。