今から40年も前のおはなしです。
埼玉のとある町で小さな保育室をひらいていました。近くには林もあり、環境も良かったのです。
生垣に囲まれた庭は、今思えばなつかしく、小さな森の中の保育室のようでした。飼いネコの2匹のネコたちは木のぼりしたり枯れ葉にうずもれながら、小さな子どもたちの成長を見守ってくれていました。農薬をまいていなかったせいか庭には鳥はもちろん、セミや様々な虫たちがいました。絵本のモデルそっくりのもぐらや、姫ネズミ、冬眠からさめたがまガエルや、ヤモリが顔を出しました。ネコたちは鳥をとったり、姫ネズミをくわえてきたりするので、ネコから取りあげて、獣医さんに診てもらったこともありますが、みな死んでしまいました。しばらくして家の建て替えで大きく育った木々を切り倒したとき、キュ~~ン、キュルルと木の悲鳴が聞こえてきて切なくなりました。土の中の動物たちは無事に引っ越しができたのかしらと今も思い出されます。
文章:本人
(昭和50年代・埼玉県)