第67話 チビ、それからミルクとチャチャ

猫って便利なもので、お座りすると、手と口が使えるでしょ。(猫の『チャチャ』が)記念の懐中時計を、分解しちゃって。でも、組み立てはしてくれないでしょ。「先生がやったんでしょ」って、「寝ている間にいたずらしたくなってやったんでしょ」って、冗談じゃないよ、そんなことやらない。娘の夫も、「そんなバカなこと信じられません」って。信じてくれるのは、その猫をゆずってくれた人だけ。その人は、獣医さんなんだけれど、「そうゆうことができる子が中にはいる」んだって。「もしかしたら、あるいはもっと色々できるかもしれませんよ。」って。チャチャは、寝室からリビングに来るとき、ドアノブにとびついて開けるんだよ。いつか見てみたいと思ってて、一回だけ、見たことがあるよ。ボールペンを分解した時は、芯についてるバネがどこかいっちゃって、結局、ボールペンは捨てたの。ワイフのポーチのジッパーを開けて、通帳をばらまいたりもしたけど、元に戻してくれないからね。

チャチャは、ちょっとしっぽが曲がっている子。2015年生まれで、人間にすれば、24才、青年まっさかり。そうゆういたずら小僧で困ってんだけど甘ったれなの。僕は、(室内でも白い)手袋をしてるの。甘がみしてくるので用心しているの。ネーネー遊ぼうよって来るときも、ごはんあげるときも。(甘がみされると)内出血しちゃうからね。

前は、犬を飼っていたんですよ。毛の長いシーズー犬の『チビ』。一番下の小僧(次男のこと)が、お世話をしていた。すごくかわいがっていて、次男坊の布団の上で寝ていたよ。結局、18歳で亡くなったかな。人間で言えば、100歳を超えてる。ワイフに抱かれて、大往生。眠るように亡くなったの。それから、もう飼えないって、チビのこと忘れられないって、30年間くらい飼わなかったの。今でも夢に見る。うんと懐いてたもんだから。なにか飼いたいなって思っても、チビの面影が浮かんじゃって、いやだめだ、と思っちゃって。30年たって姿も薄くなってきてもう大丈夫かなって思い始めた頃に、川越のお煎餅屋さんで、勧められて。「ぼちぼち飼いませんかねえ。」って。それで、飼ってみよかなぁと思って、『ミルク』を飼いはじめたの。チャチャは、その後、獣医さんに勧められて。先に飼い始めたミルクは、耳と足だけ三毛で、あとは真っ白。2011年生まれで、人間にすれば50才。二人とも、僕らの寝室で寝てるの。男の子の方(チャチャ)は、ワイフの寝床に入って、寝床の真ん中に寝ころがってるよ。

なんでも、生き物がいると心が和むっていうか、感動することも、多いね。犬のチビは、私が帰ってくる時には、玄関でお座りして待ってたな。

今は、上の娘の方(ミルク)が、ワイフが帰ってくると、ワアーオ・ワアーオって鳴いて、騒ぐの。耳がいいから、車の音でわかるのかな。僕はわからないのにね。そういうのを見ると、いとおしくなる。そんな感じだね。あるいは、チャチャは、食事の時、(だめだよって言うのに)テーブルに飛び乗って、食べ物を点検するの。「でてるおかずは何かなあ」って、確認するのね。そういう意味では、楽しいね、動物と暮らしてると。朝も早く動き出して、「早くごはんちょうだいよ。」。戸の前で、「ネーネー開けてよ。」。チャチャは自分で開けられるのにね。待ってるってのは、格好いいし、可愛いね。動物がいるのはいいね。フフフ、人間ばかりだと、けんかになるもの。

(令和1年・埼玉県) 89才・男性

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