小学生の頃、僕は友達と、ぶらぶらと、田んぼの方へよく行った。そこでヘビを見つけると、僕らは、素手で捕まえた。いかに早く捕まえるか、そこがカッコいいので、皆、競うようにして捕まえた。
ある時、そのヘビを公園まで連れてきて、砂場に放し、様子を見ていた。田んぼに住んでいるヘビが、人工の場所ではどう目に映るのだろう、と思ったのだ。ヘビは、どんどん弱っていったが、それでも、僕の右手の薬指を、噛んできた。その噛む力は弱かったが、僕は無性に腹が立って、ヘビをはねのけ、焼却炉で燃やした。
それで僕は、ヘビに呪われた。その頃から、突然、ヘビの夢を見るようになったのだ。大量の恐ろしいヘビの中を、僕は、歩いて行かなくてはならない夢だ。目が覚めると、僕は、「申し訳なかった」と何度も謝ったが、その夢は、30才頃まで、何十年も続いた。今は、もう見ない。ヘビには、かわいそうなことをしたと思う。噛まれた指の傷跡は今でも、ほらここに、残っている。
(昭和50年代・愛知県)