むかし、私の田舎では、夜になると犬を放し飼いにしていました。放された犬たちは、好きなところに行って、犬の友達と遊び、朝になると帰ってきます。朝になって見ると、広々とした、雪が積もった田んぼには、犬たちの駆け回った足あとが、いっぱいありました。
学校帰り、雪道の中、小学生の私は、よく寄り道をしました。ブルドーザーが道路の雪をかき分けると、道路のヘリに雪が溜まり、下の田んぼへとなだらかにつながります。そこを、田んぼに向かって、ジャンプして飛び込むと、深い雪に腰くらいまで埋まったりして、楽しく遊んで帰るのです。
当時、私の手袋は、なくさない様にと、母が毛糸でつなげてくれていたのですが、恥ずかしくて自分で切っていました。すると、雪遊びに夢中になって、雪の中に忘れて帰ってきたりするのです。それは、手袋だけじゃなく、マフラーだったりもしました。
うちには雑種でオスの「コロ」という犬がいました。白い毛で、胴が長く、赤い鼻をしていました。そのコロが、朝になると、私が忘れた手袋やマフラーを、玄関の前に、置いておいてくれるのです。それは、他人のものではなく、必ず私のものでした。コロは、「またうちのアホが、」と、思いながら、きっと、拾ってきていたのでしょう。
(昭和40年代・青森県弘前市)