第22話 スキンシップは困る

犬が苦手です。子供のころ、友達が、スピッツを飼っていました。友達の家に遊びに行くと、スピッツは大騒ぎで、遊んでくれという思いが、強く感じられます。走るとついてくるし。とびかかってくるし。私は、自分が心を開いていないものから、スキンシップを求められるのは、困ります。

(昭和後半~平成初期・東京都)

第21話 猛暑日のカラス

私が勤める売店から、芝生広場がよく見える。芝生広場には、カラスが、よくうろついている。今年の夏の暑さは、ひどかった。カラスが、ぱかっとくちばしを開けて、芝生の上を、歩いていく。いかにも暑そうである。となりの水場で、じっとしている。やはり、口が開いている。暑いというのが、しみじみ、伝わってくる。おもしろいなあ。

(平成30年・東京都)

第20話 煙突の中のコウモリ

中学か高校のころ、家の風呂場の改修工事をしたとき、煙突の中に、コウモリが住んでいるのが、見つかった。発泡スチロールに布を敷いて、しばらく、コウモリを飼っていたのだけれど、エサもあまり食べず、衰弱していくばかりなので、私と母で、狛江の公園に行き、コウモリを逃がした。

(平成初期・東京都)

第19話 大切などうぶつたち

子供の頃からずっと、動物を飼いたいと、思っていたのよ。でも、社宅だったし、母が動物を飼いたがらない人だったから、飼えなかったの。

でも、いつかは、と思っていて、結婚してから、ハムスターを飼ったのね。ジャンガリアンっていう種類のね。むかいの家の親子も、同じハムスターを、飼っていて、旅行に行くっていうので預かったら、よりによって、その日に、死んじゃったの!娘と私は、大泣きして、謝ったわ。その親子はさっぱりした人で、怒りはしなかったけど、ハムスターが死んだことへの、あまりのショックと、申し訳なさで、とにかく涙がでてしまって。うちのハムスターの方は、10匹くらい子どもを産んだかな。娘の友だちにあげたりしたわね。

次に飼ったのは、うさぎね。白色で、目が赤くて、「ミルク」という名前。頭をなでられるのが、すごく好きだった。でも、突然、死んでしまったのよ。病院に連れて行ったら、そういう病院だったのね、検査をすごくされて。痛い思いをさせて、かわいそうだったと思う。うさぎって、寂しいと死ぬっていうでしょ?ひとりにさせてて、悪かったなって、その時、思ったのを、覚えてる。お寺で火葬して、お墓にいれてもらったのよ。

一軒家に引っ越して、いつか飼いたいと思っていた犬を、飼えることになって、ミニチュアダックスフンドを、飼い始めたのよ。黒色をしたオスで、名前は「ルフィー」。彼の性格は、きむずかしい、という表現が、ぴったりね。私以外が、抱っこすると、ウーって、うなるのよ。もうすぐ17歳になるわね。白内障で、目がよく見えていないのに、私の存在は、わかるみたい。娘も、「ママのことはわかるのねえ。」と、言ってた。認知症の症状がでてきてて、部屋の中を、ぐるぐる回ったりしてる。それなのに、おしっこは、私が帰るまで我慢していて、戻ったのを確認してから、するのよね。おしっこシートなのにね。

ルフィーが10歳の頃に、トイプードルの「ココ」を飼い始めたわ。その2年後に、もっと小さいトイプードルの「リリ」を、飼いはじめたわね。ココは、焼きもちやきで、リリは、気が強い。二人は、仲があまりよくないわ。ルフィーといえば、二人には、無関心ね。

この子たちは、子どもみたいなものね。甘えてくれるし、癒されるわ。動物のいのちを一生、面倒を見ていくというのは、簡単なことではないけど、私は、大変だと思ったことはないわね。

動物を飼いたいと、小さいころから思っていて、それを叶えることができた。今じゃ、犬を3匹も飼っているけど、家族への説得は、上手いことやったと思うわね。

(平成・東京都)

第18話 キャベツ畑とごんべ

私は、猫アレルギーを持っていますが、実家では、猫を飼っていました。名前は、「ごんべ」で、オッドアイの白猫です。

私の実家は、世田谷にあります。今は、川は暗渠になり、畑の多くはマンションに変わりましたが、私が住んでいた頃は、家のとなりに、小さなキャベツ畑がありました。畑といっても、地主さんの自給用で、ほそぼそとしたものでしたが。それでも、ごんべにとっては、楽しいあそび場だったと思います。

家の2階の窓を少しだけ開けておくと、ごんべは、そこからベランダに抜け出し、塀に飛び降りて、外に出ていきます。そして、地主さんの畑に入りこむと、そこにいる動物たち、ちょうちょやスズメを捕まえようと、飛び跳ねて、かけまわるのです。うまく捕まえると、してやったりという顔をして、獲物を、私たちに見せに来ます。

あれから、だいぶ経ちました。地主さんも亡くなって、キャベツ畑は、マンションになりました。私も結婚して、別の土地で、暮らしています。

(昭和54年~58年ごろ・東京都)

第17話 エサの調達

夜、近所の奥さんが、虫あみを振り回している。外灯に寄って来る小さな虫を捕獲して、ペットのヤモリのエサにするためだ。

その庭では、バケツやビンに水を張り、ボウフラを増やしている。ペットの熱帯魚のエサにするためだ。きんぎょあみですくったボウフラを、水槽に、そっと放す。

今風な奥さん、その雰囲気とのギャップに、なんだか感心してしまう。

(平成・埼玉県)

第16話 強運の子ガメ

その子ガメは、強運の持ち主に違いないと、思うよ。だって、台風の翌日、落ち葉の吹き溜まりの中から、彼は、奇跡的に、見つかったんだもの。きっと、小石みたいに、強風に吹き飛ばされて、ここに紛れ込んだ後は、それ以上は飛ばされずに、じっと、台風が去るのを、耐えていたんだと思う。

子ガメを見つけたのは、同じレストランで働く同僚で、彼女が、ちりとりで、落ち葉の吹き溜まりをすくい上げた中に、よーく見ると、小さな子ガメがいたらしい。彼女の性格を考えると、すぐさま、踏みつけられてつぶされてもおかしくなかったわ。でも、幸いなことに、子ガメは、管理事務所に届けられ保護されて、私は名乗りを上げて、引き取ることになったのよ。

この子ガメは、いくつものピンチを乗り越えてきた、すごいカメだと思わない?

(平成30年・東京都)


第15話 金魚についての恐怖

その金魚が、いつからいて、いつまでいたのか、どうしても思い出せません。でも、私は、その金魚に、恐怖を感じていたのは、覚えています。

玄関わきの小さな棚の上に、その水槽は置いてあって、大きく成長した数匹の金魚が、ひらひらと泳いでいました。それは、何年もの間、そこにあったと思います。

次に思い浮かぶのは、水槽の底に沈んでいる白くて細い魚の骨です。新しい魚を入れた後に、それは、沈んでいたと思います。多分、共食いしたのでしょう。

金魚が、水槽から飛び出したこともありました。家に帰ると、金魚が、床に、落ちていたのです。恐ろしかった。

それ以来、私が最も恐れることは、大地震でした。大地震が起これば水槽が倒れて、金魚が、床に散らばるかもしれません。

けれど、大地震が起こる前に、金魚は消えました。金魚が散らばる恐れは、無くなったのです。

(昭和後半・埼玉県)

第14話 遺跡発掘と幼虫

遺跡発掘のアルバイトをしていた時の話です。私は、指示された場所を、指示されたとおりに、少しずつ、土を削り、穴を掘っていく作業をしていました。

土を掘っていると、虫の幼虫が出てくることが、しばしば、ありました。黒い土の中から、白いまんまるの幼虫がでてくると、まるで宝石のように見えました。土器が見つかるよりも、ずっと、胸にくるものがありました。

幼虫は、体をまるめて、すやすや寝ているように見えました。まさか、発掘されるなんて、思ってやしなかったんじゃないか、と思うと、かわいそうな気がしました。それで、幼虫が見つかる度に、敷地の端の方まで持っていって、穴を掘り、幼虫を埋め戻していました。でも、ある日、ついに、現場監督に言われました。「そんなことしても無駄だ。やめるように。」と。

私は、それからは、幼虫が出てきても、見ないようにしました。けっこう、苦痛でした。

(平成15年ごろ・東京都)

第13話 どうぶつぎらい

私は、動物全般が、好きではない。これは生まれつきの性分で、なにか説明できる理由があるわけではない。

実家には、犬がいたけど、これは母が飼っていたのであって、自分は何の興味もなかったし、ましてや、かわいいなんて思ったことも、ない。

結婚して、子どもが3人生まれたけど、3人とも、一度も、動物を飼いたいと言い出さなかったのは、幸いだったと思う。

子どもたちを、動物園に連れて行ったことは、もちろん、何度かある。オリの外から見てる分には、楽しいと思うし。でも、もし、動物がオリから出てきて、近寄ってきたら、「来るな!」と、言うわ。

動物ぎらいなのは、襲われたら怖いからかもね。猫だって、化け猫ってよく言うじゃない。でも、やっぱり、説明なんて、できないわ。これは、性分みたいなものだと、思う。

(平成30年・東京都)