娘より先に、猫のカトランはいた。娘が生まれて、初めて家に連れて帰った日、カトランは、自分にとって宝物の、星型のおもちゃを、娘の枕元に置いてくれた。
娘を寝かしつけ、私が部屋を離れたあとも、カトランは、部屋の窓辺で、彼女を見守っている。そしてもし、彼女が泣き出すようなことがあれば、隣の部屋の私たちのところまで来て、ニャアンと鳴いて、知らせてくれるのだ。
カトランは、決して、まだ小さかった娘のことを、またいだり、飛び越えたりすることはしなかった。いつだって、すこしばかり距離を置いて、彼女の様子を見ている。娘がハイハイをしだしたころ、カトランは、彼女の近くをちらちらと歩いて見せた。娘は、嬉しそうに声を上げると、つたない動作で、ハイハイをして、カトランに近づこうとする。その様子を確認すると、カトランは、またちらちらと歩いて見せる。そうして、カトランは、彼女を導いてくれた。
カトランかあさんと娘の、不思議な関係。今も続いている。
(平成後半・東京都)