細い道から少し降りたところに、僕の家はありました。屋敷内には、母屋と納屋と、手前に蔵が建っており、自給のための小さな畑もありました。
庭では、にわとりが、母がほうった米や麦を、つついてはウロウロと歩き回っています。おこぼれを与りに、すずめも、飛んできました。庭は、鳥の糞だらけです。放し飼いの犬は、軒下のハコの中で、寝ころんでいます。逃げ帰ってきた猫は、仏壇の裏に隠れて、出てきません。僕は、ペットとして飼っていたうさぎに、草をあげています。
日が暮れてくると、にわとりは、竹の棒でできた囲いの中に戻されます。仕事を終えた農耕馬も、納屋の中に戻ってきます。
夜、寝静まったころ、納屋から、ドスンと音が聞こえてきます。狭い納屋で、馬が寝返りをうったので、体が壁にぶつかった音です。猫が、布団にもぐりこんできました。
(昭和20年代・石川県)