第11話 春が来る少し前
僕の家は、石川県の米農家でした。春が来る少し前になると、農耕馬を借りてきます。どんぐりとした農耕馬は、よく働き、田んぼを耕したり、荷物を運んだりと、重要な役割を果たしていました。 毎年、違う馬がやってきますので、慣らすま...
僕の家は、石川県の米農家でした。春が来る少し前になると、農耕馬を借りてきます。どんぐりとした農耕馬は、よく働き、田んぼを耕したり、荷物を運んだりと、重要な役割を果たしていました。 毎年、違う馬がやってきますので、慣らすま...
ある日を境に、友人の庭先に、猫が現れるようになった。 張り紙の迷い猫にそっくりだったので、連絡をしてみたところ、やはりその通りであった。早速、飼い主が駆けつけてきたが、どうやってもつかまらない。 猫の飼い主は、猫の保護施...
私は、今、その猫を、凝視している。その猫は、豊かな毛並みと、まんまるな金色の瞳を持ち、どこから見ても目が合うように描かれている。 この幸運を呼ぶ猫の絵は、兄が職場からもらってきて、もうだいぶ前から、実家の棚の上に置いてあ...
ある日、母親が、私が子どもだった頃の写真を見せてくれました。そこには、3才の私とダックスフンド、後ろには外国製のドラム式洗濯機が、写っていました。 私の母親は、ハイカラな人で、新しもの好きでしたから、当時めずらしかったド...
住み慣れた三鷹の家を建て替えることになって、しばらくの間、私たち家族と飼い猫のべんちゃんは、西荻窪に仮住まいすることになりました。そんなある日、べんちゃんが、いなくなってしまったのです。心配した家族は、探し回りました。す...
飼い猫のべんちゃんは、鼻の近くに、ほくろの様なぶちがありました。べんちゃんの母親は野良猫で、他の兄弟はすぐにもらわれていったのだけれど、不細工だったべんちゃんはひとり残っていて、私たちは、そのべんちゃんをかわいいと思って...
Nちゃん家はクーラーがある様なお金持ちで、シーズー犬と灰色のでっかい猫を飼っていました。私たちはその猫を、よさたろう、と呼んでいました。Nちゃんは、「やめてー、そんな名まえじゃないよー」と、言ってましたが。 よさたろうは...
僕が中学生だったから、30年以上前のこと。先生が、突然、授業中に話し出した。 飼い猫が死んで、あまりに悲しく、あまりに離れがたかったから、愛猫の毛皮を、小さく切り抜いて、肌身離さず持ち歩いているのです。 見せてくれたそれ...