本21 かいじゅうになった女の子

「かいじゅうになった女の子」
末吉暁子 作・大橋歩 絵/1975年/偕成社

作は「ざわざわ森のがんこちゃん」の末吉暁子さん。絵はイラストレーターの大橋歩さんです。がんこちゃんとフォルムは似ていますが、これはまた別のおはなしで…

魔法使いのテレビ番組を見ていたみちこと妹のミミが、「かいじゅになりたい!」「カエルになりたい!」と叫ぶと、なんと二人は突然変身してしまい… 。お母さんとお父さんを巻き込んで、日常的で日常的でないドタバタな一週間が始まります。

今日も一日、明日からも毎日いつもの自分かあと思うと、うんざりしてしまう時ってあります。それに比べて、本の中の登場人物たちは、ここではない場所で突拍子もないことが起こって、それでもめげずに楽しく乗り越えていく。かいじゅうになった女の子も初めは驚きますが、その後はカラッと受け入れて楽しいことに邁進していきます。大人の方が慌てふためいているくらいで、でもそうして女の子を守っているんですね。

好奇心や空想力を刺激してくれた物語たちは、話し出す動物や架空の生きもの、人間だとしてもあり得ない設定で、私をワクワクさせてくれました。現実はあまりに厳しく複雑なので、人間世界を超えた存在が、心を解放し自由にさせてくれていたのだと思います。

まあそんなこと考えなくても、この本は子どもが大好きな一冊になるであろう傑作です。

本20 絵本の国のぬいぐるみ

「絵本の国のぬいぐるみ」原優子/平成21年初版/白泉社

この手芸本を眺めていて、ふと考えました。絵本の主役に動物が多いのはなぜなんだろう。当たり前すぎることでもありますが、調べてみると、京都大学の矢野智司教授の論考を見つけました。

ちょっと堅い話になりますが、どうやら…

絵本に動物が多く登場する理由は、読者である子どもが、動物と出会うことで「人間になる」とともに「人間を超えた存在になる」ことができるから、ということらしいのです。

1.【人間になる】

「動物という存在」は、その特性の差異によって「人間という存在」を照らし出してくれる。それにより「人間らしさとは何か」を知ることができ、これが「人間になる」ことの手助けとなる(人としての発達)。

2.【人間を超えた存在になる】

「動物」は、世界と一体化している「生命そのもの」であり、子どもが絵本を通して「動物」となる体験は「生命」に触れる体験となる。それは生きる喜びと不思議を感じることでもある。(子どもはまだ定まっていないため、ネズミならネズミそのものになり、人を超えて世界に溶けることができる)。

もしかしたら、動物をペットとして飼うことも含め、多くの動物との関りは「人間とは何か」「世界とは何か」を経験するためなのかもしれません。人はひとりでは生きられないように、カテゴリーとして「他者」である「動物」がいなければ、人類は世界にひとりぼっちとなって、その孤独は深いものになるのではないでしょうか。

私自身、絵本ではありませんが児童文学をよく読んでいました。児童文学も、動物や動物のような架空の存在が出てきますが、今思えば、それらの登場で世界の豊かさや広がりを感じていたような気がします。お話の中の冒険にワクワクしたのは、人だけの世界ではない未知の生きものたちが生きる世界を、自分も人間とは少し違う存在となって経験することができたからではないか…と思ったりします。

そんなことを考えながら、ぐりとぐらの笑顔を見ていると奇妙な気持ちになります…

興味のある方は、ぜひ下記の論考や書籍をお勧めします。私も読んでみたいのですが、書籍の方は絶版でしたので図書室で借りれたらなと考えています。

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矢野智司教授の論考 ⇒ 011_kokoronomirai-vol.6_04・12_data.indd (kyoto-u.ac.jp)

矢野氏著作の書籍 ⇒ 動物絵本をめぐる冒険 – 株式会社 勁草書房 (keisoshobo.co.jp)

本19  スナック キズツキ

「スナック キズツキ」益田ミリ/2021年1月発行/マガジンハウス

この物語の舞台は、あくまでスナック キズツキで、鳥のキツツキではないのですが、どうぶつの本で紹介します…

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こちら「スナック キズツキ」は、原田知世さん主演でドラマ化もされた人気漫画。

誰もが知らぬ間に人を傷つけ、自分もまた傷つけられている。そんな時、ふらっと立ち寄れる場所、それが「スナックキズツキ」。スナックのママ・トウコが、お酒ではなく、ほっこりする飲み物(&食べもの)でもてなしてくれます。傷ついていたお客たちも、トウコのペースにのせられ、本音をついつい発散して…、なんだか少し元気になって家へと帰っていきます。

誰かにとって優しい人も、誰かにとって優しくない人も、誰もがみな傷ついているような昨今の状況で、ちょっぴり本音を言える人がいるって貴重ですよね。

自分の人生を解決して欲しいとは言わないけれど、一緒にしゃべって、ちょっと黙って、ちょっと笑えたら、なんとなく気が紛れてる気がします。「傷つける人、傷つく人、それを癒す人がいて、世の中は循環している」。ドラマのエンディングテーマを歌っている森山直太朗さんがコメントしていました。そうかもしれません。どうかその循環が、傷つく人で止まらないように。

今回は、人間の話でした…

2 オオカミの護符

「オオカミの護符」/ 小倉美惠子 / 2011年 / 新潮社 / 上記の文庫本は、平成26年発行のもの

以前少しだけ、川崎市宮前区に住んでいたことがあります。起伏の多い土地で、私が住んでいた建物も急勾配の坂を登った先にあり、買い物をした帰りは、坂の下で一休みをしてから登ったものでした。

その当時、私は区内の図書館へしばしば通っていました。そこで初めて「オオカミ信仰」を知ります。今回紹介する「オオカミの護符」の書籍が大きく取り上げられていたのを、たまたま見かけたのです。しかし、気にはなっていたものの手に取ることもなく、先日、御岳山を登ったのを機に、やっと読み始めました。

この本は、著者の小倉美惠子さんが地元・川崎市宮前区土橋にある実家の土蔵に貼られている「オオカミの護符」に疑問を持ったことから始まります。この辺りは、東京オリンピックが始まる頃までは、畑や野山が広がり、百姓は野良で働き、子どもだった著者も仲間たちと駆け回って遊んでいるような昔ながらの里山でした。ところが次第に、山は削られ、小径や小川が消え、茅葺屋根の家々も消え失せていきます。私が住んでいた場所もそうやって建てられた新興住宅のひとつだったのです。

わが家の土蔵には、今も両親の手によって毎年「オイヌさま」が貼り替えられている。それにしても新たなお札は、一体どのようにしてやってくるのだろう。母に尋ねると、少し驚いたように「オイヌさまは百姓の神様だよ」と言った。そして「御嶽講の講中の家に配られるもんだ」と教えてくれた。(略)「御嶽講」の名は耳慣れていた。祖父母が時々「御嶽講」に出かけていたからだ。

-本文より引用

著者の小倉さんはその後、「オイヌさま」とは何であるのか、百姓たちの言葉を聞き取り、各地を巡りながら、深めていきます。そして、地元・土橋から始まった謎解きの旅は、青梅の御岳山・武蔵御嶽神社や秩父の宝登山神社、猪狩神社、三峰神社など、関東一円に広がるオオカミ信仰とそれを今でも大切に守り続ける人々へと、広がっていくのです。

護符ではなくてすみません…。交通安全のステッカーです。

能天気な観光気分で御岳山に登ってきた私は、ガーンとしました。そこには、多くの人たちの暮らしと祈りがあったのです。なんて多くのことを見逃してきたのだろう。せめて読んでから登ればよかった。…これから少しずつ、この本に登場した神社にも登りに行こう。知識も広げていこう。私が以前、採話の中でお聞きした話の中でも、年配の方の記憶には今の町とは違う風景が残されていました。そこには、新興住宅街で育った私には知りえない思いがあるのかもしれません。

人々に寄り添い丁寧に取材された良書です。映画「オオカミの護符-里びとと山びとのあわいに」も、ぜひ鑑賞してみたい。映像や文章で、記録に残していく大切さを感じます。

株式会社ささらプロダクション(著者の会社)のHP→ Tamaca | Sasala Web Store

【追記】

その後、父からの話で、私が通っていた都内の保育園では、御岳山の宿坊・馬場家にお泊りしていたとのこと。オオカミ信仰と関係があるかは不明ですが、御岳山が地域にとって身近な存在ではあったことが分かりました。どうやら年長組の子どもが対象だったようで、3歳で引っ越した私には記憶がないのが残念です…

1 御岳山・武蔵御嶽神社

東京都青梅市の御岳山・武蔵御嶽神社に行ってきました。

ロープウエイに乗って、御岳山の中腹まで上がり、起伏のある参道を登っていきます。山の下までは、ジリジリと暑かったのですが、ここまで来ると天然の涼しさ。
巣箱がかけられているのを発見!
どうやらこの巣箱は「つるつるハウス」というようで、だれかのおうちであるようです。ムササビかフクロウか、カケスか。たぶん、ムササビじゃないかなあ…
ひたすら登っていくと、眼下に、関東平野が見えてきます。頂上付近からは、筑波山や東京都心のビル群、埼玉県のソニックシティ、房総半島、横浜のランドマークタワーなど、関東全域が見渡せるとのこと。近場だけではなく、関東各地の「講」の石碑が、参道脇に建てられていたのも、分かる気がしました。
途中、神代けやきが現れました。樹齢1000年、国指定天然記念物の巨木です。今でも、緑の葉を豊かに茂らせています。すごいです。

すぐ横には茶屋があり、そこから眺める展望はすばらしく源流水で淹れたアイスコーヒー(七代の滝の原水コーヒー)も美味しかった!葉が茂るけやきの下は、敵から身を隠しやすく、カケスが毎年、巣箱に巣を作り、窓の近くに設置したエサ台に、エサをねだりにやって来ると、女将さんが話してくれました。
境内まで続く階段から見下ろしたところ。ここまで来る間には、たくさんの宿坊がありました。山岳信仰の場である御岳山には、参拝者をもてなしたりお札を配布したり宿泊を提供したりする御師(おし)さんが、代々いらっしゃるそうです。
境内には、本殿をはじめ、数々の神様を祀るお社がありました。この写真は、「皇御孫命社(すめみまのみことしゃ)」の狛犬です。ユーモラスで、太った犬?イノシシ?か、気になったので、撮影しました。
頑張って、護ってくれています。

次回は、武蔵御嶽神社の信仰である「おいぬさま」について、紹介したいと思います。

本18 ピーターラビットのたのしい料理

ビアトリクス・ポター 画  フレデリック・ウォーン社 編 北野佐久子 訳 /1993年 発行/福音館書店

「ピーターラビットのおはなし」が生まれたのは、1900年頃のイギリス。ですので、今の日本の発想とはちょっと違っているのが、新鮮。材料は、簡単に手に入るシンプルなものですが、作り方は、本場ならでは。料理名も、絵本らしくてユニークです。

例えば、「ご健康を祝って乾杯のためのレモネード」の作り方

材料は、レモン 大2個、ハチミツ 大さじ3、水(お湯) 500cc、氷 6個。耐熱容器に、薄切りにしたレモンとハチミツを入れ、沸騰させたお湯をレモンの上からそそぎます。ハチミツを溶かし、スプーンの背でレモンを押しつぶして、汁を絞り出します。容器に蓋をして、1時間そのまま置き、それを濾して種と皮を取り除いたら、氷の入った水差しに入れて、冷やします。

なんだか、とても美味しそう!

もう一つ、ご紹介。「ジェレミー・フィッシャーどんのチョウチョウのサンドイッチ」

作り方

食パンを、チョウチョウの形に切って、バターを薄く塗り、輪切りにしたニンジンを羽根の柄に、二つに切ったピクルスを胴体にして飾ります。他にも、二十日大根の輪切りを羽根の飾りにして、ハムの細切りを胴体にしたり、チョコレートクリームをパンに塗って、バナナの輪切りを羽根の飾りに、オレンジの皮の千切りを胴体に、など、色々、応用できます。ちなみに、切ったパンの端っこも、サンドイッチにして食べます。

自分でも、二十日大根バージョンを作ってみましたが、思った以上にシンプル。でも、羽をパタッと折って食べるのは、なかなか良いものです。味も、パリパリして、美味しかったです。

ちなみに、ジェレミー・フィッシャーどんはカエルです。

本17 それゆけ、ブラシ

それゆけ、ブラシ(文 /ペーレ・カルデルス 絵/ カルム・ヴェンドレル 訳/早川麻百合 1987年第1刷 ほるぷ出版)

35年前に出版されたスペインの絵本です。他の家にあげられてしまった子犬の代わりに、ブラシを犬に見立てて、愛情をかける男の子のお話。

一日中、新しい友達(ブラシ)を連れて歩き、ベッドでも抱きしめて眠ります。すると、不思議なことに、生きているみたいにほんのりとした温もりが感じられます。「よのなかには りくつじゃ せつめいできないことが あるものなんだ。なにしろ これは ほんとうに、ほんとうのことなんだから。」

ついには、家に侵入した強盗もやっつけてしまいます。

すごいぞ、ブラシ!ブラシは、正式には動物ではないけれど、どうぶつの本として紹介しました。だって、毛が生えていてほんのり温かくご主人の愛情に応えてるのだから。

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ウクライナの動物たちへ

動物のためのウクライナ緊急支援基金の情報が載っているサイトです。

公益社団法人 アニマル・ドネーション → ウクライナの動物保護&寄付情報

84 岡山名物 きびだんご

同僚の旦那さんが買ってきてくれたお土産「岡山名物 きびだんご/山方永寿堂」です。パッケージがとにかく可愛い! 箱のフタは、閉じると桃の絵になっています。
桃のフタを開けると、赤ん坊の桃太郎が現れます!(右上を見てください)パッケージが、桃太郎のお話になっているんです。
きび
だん

きびだんごの山方永寿堂さんは、昭和21年創業以来、きびだんご一品のみを作られているそうです。モチモチと柔らかくて、シンプルで優しい甘さ。

⇒ きびだんごの山方永寿堂 さん

開けて楽しい、食べておいしい ⇒ きびだんごができるまで!

こんなのも ⇒ ついに完成!桃太郎アニメーション!

パッケージをデザインしたのは、岡山のデザイナー「COCHAE(コチャエ)」さんだそう。ワクワクするデザインです!

⇒ COCHAE さん

昔こっぷり。

83 ムシトリスミレ

ムシトリスミレ ウェサーを買いました。食虫植物です。スミレに似た花を咲かせます。撮影のために屋外に置いていますが、屋内栽培とのこと。

葉っぱには、無数の小さな毛が生えていて、なんとなくしっとりしています。下側の葉っぱに虫がくっついているの見えますか?

ムシトリスミレの隣にある多肉植物は、花うらら(プリドニス)です。ただいま、黄色い可愛い花を咲かせています。植物を眺めていると癒されます。今回は、動物ではなく植物の紹介になってしまいました…

82 とんぼ柄の湯呑

とんぼ湯吞

昭和そのままの陶器屋さんは、丁寧に清潔に整えられて、たくさんの種類の陶器が並んでいました。その中で、渋めのとんぼの湯呑を購入。女性の手に合うくらいの小さめのサイズで、口のあたりもよく、お茶も美味しい。一服して、ちょっと休憩。