本11 「阿呆の鳥飼」・「新方丈記」 

左・新方丈記(内田百閒・1992年・福武書店)/右・阿呆の鳥飼(内田百閒・2016年・中央公論新社)

内田百閒のたくさんある随筆集のうちの2冊です。これら書籍は平成になってからのものですが、初出は昭和の初めごろから昭和40年代までのものになります。時代の大きな流れを背景にしながらも、百閒先生の日常が、鋭さとユーモアをもって、描かれていて、とても正直な文章を読んでいると、淡々として同時に心が揺れる感覚になります。

今年の12月は開戦80年とのことで、戦時中や前後のことを特集するドラマや番組を目にすることが多くありました。その時、動物たちは人々とどの様に暮らしていたのか、その一つとして、内田百閒の随筆「灰塵」(新方丈記)と「目白落鳥」(阿呆の鳥飼)を紹介したいと思います。この二つは別々の本に収録されていますが、どちらも当時飼っていた目白が登場します。「灰塵」では、東京大空襲の夜、焼け出されて火炎に追われた時、ぎりぎりの決断で、一緒に連れて逃げた話。「目白落鳥」では、共に生き延びて、狭い小屋で暮らし、ついには死んでしまうまでの話になります。小説の様に長いものではなく数ページにすぎませんが、その場面を、臨場感をもって読むことができます。

明治大正昭和と、大きな戦争や災害がある中で、日常を生きた百閒先生の魅力的な随筆集だと思います。

76 ポストカード

活版印刷 九ポ堂のポストカード

九ポ堂さんは、《主に活版印刷で「少し不思議な紙モノ」を制作販売している会社》とのことで、このポストカードもその一つです。

深い紺色をしたはがきに銀色で印刷してあります。この組み合わせもワクワクしますが、描かれている世界も、空想の世界へトリップさせてくれて、なんだか気持ちがいいのです。子どものころ読んだ児童文学みたいに、本当の世界はこちら側だ(だったらいいのに)、と思わせてくれます。魚のように海の中を移動して、世界を旅することができたら、どんなに素敵でしょう。これ以外にも、様々なシリーズがあります。どれも素敵です。画像より実物の方が、より世界観を感じられますよ。

九ポ堂さんHP → about us – kyupodo

75 ワニのバターナイフ

ワニの形をしたバターナイフ

ワニの尻尾を持って、長い口でバターを塗ります。デザインの可愛さで購入しました。木製のカトラリーなのに安価なのでびっくりしましたが、インドネシアに自社工場を有してるからとのこと。(このワニもインドネシアからやってきたのかな。これを作ったインドネシアの人ってどんな人だろう?)その縁もあって、オラウータンの森を保護する活動にも協力していて、このバターナイフではないですが、商品を購入することで寄付ができるそうです。

有限会社 藤芸 さん→ オランウータンセイバーズ

本10 「動物の絵 」府中市美術館公式図録

府中市美術館/2021年9月第1刷発行/講談社

「日本の動物の絵は本当に豊かだ。(中略)どこまでも愉快な作品もあれば、小さな命にしみじみと心を寄せる作品もあるし、」(音ゆみ子)

「江戸時代までの動物の絵を生んだものの根幹にあるのは、人々の動物への愛だろう。それは、人と同じ命を持つ者への愛という、仏の国の教えに根ざしたものである」(金子信久)

ーまえがきよりー

府中市美術館の「動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」展に行きました。

人はどうして動物の絵を描くのだろう。まあ「描きたいから」というのが、本当のところかもしれません。今、寝ているうちの猫も、ついつい描きたくなる(撮りたくなる)それって自然なことなのかと。でも、今と昔では(あるいは日本とヨーロッパでは)違った状況があったようで、この展覧会では、色んな視点からどのような思いや工夫で動物が描かれたのか紹介されています。描かれた絵は、その時代や国の「まなざし」でもあるのですね。

美術館でのぞき込んで見て歩いていると、日本の動物画は、ユーモアと可愛さに溢れていて、思わず顔がにやけます。この絵を描いた絵描きさんも、同じ気持ちで動物を見ていたのかなと想像してみたり。それぞれの画家たちの色々な試みも楽しめます。それにしても、徳川家光の動物画が、やっぱり一番にやけますね。

展覧会は、東京・府中市美術館、2021年11月28日まで。

府中市美術館HP → 府中市美術館 (city.fuchu.tokyo.jp)

74 紙コップのスリーブ

「コーヒー リトモス」のコーヒーのスリーブ

東京・八王子駅南口の近くにあるカフェ「コーヒー リトモス」さんで、コーヒーを頼んだら、スリーブに手描きのイラスト。可愛い。時には、お客さんのリクエストに応えて、その場で描いてくれることもあるそうです。

リトモスさんの軒先テントには、サーバーを持ったリスが描いてあります。店名にリスが入っているから、だそうですよ。格好いい店内には、動物モチーフが点在。店主さんは、絵描きさんでもあって、作品を見せて頂けました。段ボール板に黒のマッキー(マジックペン)で描いてあり、抽象でもなく具象でもなく、何か生きものらしいものたちがうごめいているように見えました。イメージがあふれて、もれだしているような。

人見知りの私にも、親切に話しかけてくださり、色々なお話を聞かせて下さいました。店主さんのお人柄が素敵です。ギャラリー展示もされていて、楽しい気持ちになれる場所でした。(リトモスさんのホームページとは、店の外も中も、店主さんのひげも、少し変わったようです。訪れてのお楽しみ。)

リトモスさんのシール/男の子の顔が店主さんに似ています

コーヒー リトモスさんのHP → coffee ritmos ~コーヒースタンドと絵~

         Twitter → ritomarus ( COFFEE ritmos )さん

73 壁掛け一輪挿し

MADE IN OCCUPIED JAPANの壁掛け一輪挿し

MADE IN OCCUPIED JAPANと印された青い小鳥の一輪挿しです。屋根のあたりに割れた跡があります。それでも捨てないで、接着して保存していたのは、大事に思っていたからかもしれません。OCCUPAIDの印があるので、70年くらい前のものだと思います。一度は割れても、今まで残ってきたのだから、何でもないものであっても、次の持ち主に手渡してあげたいなと思ってしまいます。

本9 「I CAN FLY」

作・Ruth Krauss/絵・Mary Blair(Golden Books/1951刊行)

「A bird can fly. So can I」から始まり、「自分もできるよ!」と女の子が、動物たちのキュートな特性を、まねてみせる絵本です。もちろん本当に鳥のように空を飛べるわけではありませんが、「I can fly(わたしのやり方でね!)」とやってしまう女の子は、とても頼もしく素敵。韻を踏んだリズミカルな文章も、まるで子どもの楽しいひとりごとのように聞こえてきます。

この本の絵を描いたメアリー・ブレアさんも有名ですが、文章を書いたルース・クラウスさんの詩的な想像力も好きです。「ぼくはきみで きみはぼく」では、想像力豊かな子どもたちの世界がたっぷり楽しめます。現実の入り込む余地なんてないくらいどっぷり。「愛と友情」の話で、どうぶつの本ではありませんが。

文・ルース クラウス/絵・モーリス センダック/訳・江國香織(偕成社・2014年)

本8 「いまはむかし さかえるかえるのものがたり」

音とリズムが楽しい絵本です。「かえる」という言葉を、繰り返し使って韻を踏み、音楽のラップのような気持ちよさで、愉快な大団円を迎えます。絵は「11ぴきのねこ」の馬場のぼるさんで、ユーモアたっぷりのイラストは分かりやすく、これまた見てて気持ちがいい。話がトントンと展開して最後のオチで、気持ちがストンとします。

まつおか きょうこ・さく/馬場 のぼる・え 
こぐま社(1987年) 

本7 「COME FOR A WALK WITH ME」

古書店で見つけた時には、すでにずいぶんと薄汚れていましたが、可愛い絵に魅かれて買うことにしました。洋書ですので、ぱらぱらと絵だけを眺めて楽しみます。英語も読めないこともないのでしょうけど、絵だけを眺めて想像すると、疲れた頭が、少しばかりリラックスするのです。絵の中の女の子と動物たちは、本当に楽しそうに笑っています。翻訳本も出版されているようですが、そういう訳で、私は洋書版のこの本を大事にしています。

文・絵/MARY CHALMERS(1955年)

日本語訳「いっしょにおつかい」

メアリーチャムラーズ(著)/福本友美子(訳)/岩波書店(2019)

第115話 生まれ変わりの、その後

仕事中、Tさんが、飼い猫の画像を見せてきて「前に死んだ猫が使ってた猫ちぐらとかぬいぐるみで、よく遊ぶんですよ。他の猫たちは見向きもしないのに、この子だけが、懐かしそうに遊ぶんですよ。」と言う。疲れて眠る時にしなだれかかって寝るところも、前の子と似ているらしい。感心して「そういえば、その子の名前はなんて言うんですか?」と聞いた。「ノア」。

「そのまま同じ名前を付けて呼んでる。ノアって呼ぶと、ニャンと鳴くんですよ。まだ、12匹でいた時に…」

まだ、兄弟たちと八百屋にいた時、猫をもらいに来た奥さんが、猫たちに向かって「ノア」って呼びかけてみたら、この子が鳴きながらこちらにやって来たとのこと。

「奥さんは、この子には同じ魂が入っているって言ってる。見た目はね、(初代の)ノアが家に来てから数か月後に死んじゃった猫に似てるんだよ。だから、外見はその子で、中はノアのハイブリットなんじゃないかと。」

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新ノアちゃん
大きなクマのぬいぐるみは、初代ノアちゃんがよく寝ていた場所。
新ノアちゃんも、ここでよく寝てる。

※第112話・第113話の後日、語られた話です。

第112話→こちら

第113話→こちら

(令和3年・千葉県)