第114話 朝の公園

朝、公園を散歩する。葉っぱがさわさわ揺れている。偶然かもしれないけれど、挨拶を交わしている感覚がある。歩きながら気になる葉っぱを触っていく。「おはよう」って愛情を葉っぱに渡しているから、葉っぱからも愛情を渡されているような循環を感じる。それを2月頃からやっているから、森と信頼関係が出来てきているように思うんです。

ある日、右側が気になってパッと見たら、葉っぱの先端に朝露がひとしずく、それが太陽にあたって、光り輝いていた。なんか、自然の中の宝石じゃないけど、しばらく、ワァーと見ていた。全部が合わさったこと、偶然が織りなしたこと、すごくきれいだった。

公園に座っていると、名前もわからない虫がいて、払ったりすると寄ってくる。でも、追い払ったり逃げたりせずに、呼吸を整えて、森と同化すると、攻撃してこない。しばらく一緒にいるんだけど、自然にいなくなる。共存ってこういう感じなのかなと思う。一緒にいるっていう感覚は、いいなって思う。

(令和3年7月・東京都)

本6 「ピーターラビットの自然観察」

1993年7月15日発行 福音館書店
ビアトリクス・ポター 画/ フレデリック・ウォーン社編・作図 /北野佐久子 訳

暑くなってきました。下を見ると、たくさんのアリが、先を急いで歩いています。近所の神社では、小さな蟹を見つけました。私が顔を近づけると、挟んでいたエサの虫をほっぽりだして慌てて逃げ出しましたが、私が離れると、再びエサを取り戻し、脇の雑木林へと入っていきました。生き物たちが、にぎやかに活動しているのを見ると、夏がきたなあと思います。

この本では、季節ごとの自然観察のアイディアが、紹介されています。『土の「かきまぜやさん」』とか、『見えない胞子』とか、『川のほとりで』とか、どれも始めやすく、子どものころのワクワクした気持ちを、思い出します。それぞれのページには、【ひつようなもの】リストが載っています。ひつようなものを、家じゅうから探し出すところから、実験は始まります。もうすでに、ワクワクです。これから、なにが起こるのだろう。なにが見られるのだろう!

ピーターラビットの作家・ポターさんは、子どものころより、自然を熱心に観察し、スケッチに没頭していたそうです。そのスケッチやピーターラビットの挿絵も、この本の見どころです。もしかすると、スケッチしてみたいと思うかもしれません。私は思いましたよ。あんなに上手くは描けないけど!

※『ピーターラビットの自然観察』は、中古本で手に入ります。

71 鳩笛

土製の笛玩具/鳩笛

お店の方いわく、戦後に作られた下川原焼土人形の鳩笛と思われます。今も青森県弘前市の窯元で作られている馴染み深いお土産とのこと。

5月ごろ、家の物陰に、鳩のひなを発見しました。

もうだいぶ大きくっていましたが、羽はむっくりとしたグレー一色で、いつ見ても、暗がりでひとりじっとしています。出入り口に小枝が散らばっているので、親鳥が出入りしているようなのですが。そのうちに、巣から出て、渡り廊下で佇む姿を見かけるようになり、近寄ると、バタバタと飛び立ち、気が付くと、見かけることもなくなりました。その頃には、グレーだった羽も、緑と紫の模様が浮き出て、シュッとしたきれいな若い鳩になっていました。残していったフンと小枝は、その後、きれいに掃除しました。

今と昔ではデザインが少し変わっています

第113話 生まれ変わりの、続き

休憩中、事務所でコーヒーを飲んでいたら、Tさんが何かを取りに来た。と思ったら、こちらをパッと見て、「こないだ、猫の生まれ変わりの話をしたじゃないですか。見つかりましたよ。でも、柄が違うんですよね。」と言った。「それは、いつものパトロール中に見つけたんですか?」と聞くと、「八百屋さんからもらってきた。」と言う。どうやら、近所の八百屋さんに猫が出入りしていて、その猫が3匹の子猫を産み、その3匹のそれぞれが、また4匹ずつ子猫を産んだらしい。計12匹いるという。「うちの奥さんが、八百屋さんに行ったとき、『そろそろ子供産んだんじゃないの?』って聞いたら、12匹産んだって。で、その中の、1匹をもらってきた。」

「昨日から、うちにいるんですよ。でも、柄が違うんですよねー。前の子は顔がまん丸だったけど、どうもまん丸そうでもないし。手のひらに乗るくらいの小さな子なんですけどね。本当に生まれ変わりなのかなあ。そう思い込むしか、ないですよねえ。」スマホで画像を見せてくれたので見ると、普通にかわいい子猫だった。「あー、かわいいですねえ。」「まあ、そうですねえ。」柄はキジトラで一緒だが、細かいところが違うらしい。

(令和3年・千葉県)

※第112話「生まれ変わりの」の後日、語られた話です。

その採話はこちら→ 第112話 生まれ変わりの

70 ゾウの置物

石で作られている小さいゾウ

背丈(足もとから背中まで)6センチ程度の小さな石のゾウです。妙な存在感があって、目や鼻の模様は大らかなんですけど、体つきだけ見ると、内臓が入っているお腹のぷっくり具合や耳の付き方など、子どものゾウのような愛くるしさがあります。おそらく、海外で作られたものだと思いますが、日本までよく来たなあと思います。実際にいる小型種のゾウの様に見えてきます。

幼い感じのお腹とお尻

本5 「小さな生きものたちの不思議なくらし」

初版 発行2009年/福音館書店
著者/甲斐信枝

 私にとって、雑草や虫たちは、よく見かけるが故に、よく観察することも少ない、知らないことだらけの生きものです。暑くなってきて草が伸びたなとか、屋外の物をどけたら虫がたくさんいてびっくりしたなとか、ひとつの場面に遭遇したくらいの感じです。でも、この本では、植物や虫たちにも内なるものがあり、彼らの時間や摂理によって、自ら動いている(生きている)ことが描かれています。人間として人間のルールで生活していると、彼らのくらしは不思議ですね。甲斐さんの徹底した観察のおかげで、端正な絵ときれいな文章で、それらの一端を知ることができることは、幸せです。

甲斐さんの観察エピソードで、畑の跡地を借り受けて、雑草を生活させてやるために、根っこをすべて取り除いて更地にし、草に与えてやったエピソードがあります。その後、5年間、ほとんど毎日のように観察し(写生を繰り返し)、期待以上の草のドラマを目撃するのです。このことを知って、私は甲斐さん自身に、俄然、興味が湧いてきました。甲斐さんの目を通した世界を見てみたいなと思いました。この本を読んで、やはり、この方には、豊かな世界が見えているのだな、そのような方がいるのだな、と嬉しくなりました。

甲斐さんの絵本を手に取ったことがある方も、たくさんいらっしゃると思います。この本は、絵本の外につながる甲斐さんの世界が、堪能できますよ。

本4 「子どもと一緒に見つける生きものさんぽ図鑑」

監修:NPO法人自然観察大学/永岡書店/2021年発行

今度散歩にでかけたら、途中ちょっとの間 立ち止まってみましょう。

屋根の上や木を見上げたり、道ばたに咲く花に顔を近づけたり、しゃがんで地面を観察したり、小川や池の水の中をのぞいたり、耳を澄まして自然の音を聞いたりすれば、そこはきっと 生きものの気配があります。 

私たちの周りには、驚くほどたくさんの種類の生きものがいます。色も形も大きさもすべて違いますが すべてがひとつの命。

すべてが地球の上で私たち人間と一緒に暮らしている 「生きもの」という同じ仲間です。

本書「はじめに」より引用

このようなブログをやっていながら、実は全然、私は、生きものに詳しくありません。名前も基本的なことも、あやふやです。でも、興味はあるんです。この本は、身近で見られる200種類の生きものを紹介しています。全ページカラーで、写真も豊富で見やすいですし、説明文やコラムも面白い。

散歩をしていても、頭の中は考え事ばかりで、鳥や虫を見かけても、背景の一つとしてしか見ていない。でも、その名前や特徴を知ってみると、なんだか急に、同じひとつの命として、親近感がわいてきて、今、一緒にこの場に生きているのだなぁと、人間族の孤独が(オーバーですが)、癒されるような気がします。耳を澄ますと、車の音の隙間から、鳥の声が聞こえてきます。身近な鳥は、カラスやハトばかりじゃない、小鳥もたくさん見られることにも気がつきました。頭の中が一杯で、見えてなかっただけですね。頭の中からここに、戻ってくるための方法として、五感を活用して、生きものの気配を感じることも、ひとつの手かもしれません。そして、もうちょっと知りたくなったら、図鑑を開いてみてるのもいいかも。名前を一つ知るだけでも、嬉しくなります。住宅街や公園・水辺等、場所によっても、会える生きものが変わってきますよ!

NPO法人 自然観察大学のホームページ →こちら

本3 「猫は、うれしかったことしか覚えていない」

文・石黒由紀子/絵・ミロコマチコ
第1版刷 2017年/幻冬舎

ステイホームになり、毎日、家の中で猫と二人きり。これがもし人だったら、出勤してくれないかな、とちょっと疎ましくも思うかもしれませんが、猫はそうは思わせないから不思議。不思議っていうより自然ですが。

この本は、「猫は、」から始まるエッセイと、その合間にミロコさんの猫あるあるのイラストが挟まっていて、ニヤニヤ(ときおりホロリ)が満載。その上で「なぜ、人は、猫と一緒にいられるのか」の理由が、この本の中には、あるような気がするのです。猫族の文化のようなものが、よーく観察して描かれていて、私がつい「自分より猫たちの方が正しいかも」と思っちゃうのは、その大らかさと優しさに憧れているからかもしれません。人間ルール、たまには破りたくなったとき、猫が率先して破ってくれます。ありがとう、猫たち。

69 お風呂のおもちゃ

お風呂で泳がす魚のおもちゃ

 ゼンマイを巻いてお風呂に浮かばせると、尾びれがパタパタと動いて泳ぎます。手に入れた当初は、尾びれが動かず壊れているのかなと思っていましたが、お風呂に入れると、とたんにスムーズに動き出したので、やはり魚は水の中がいいのだな(おもちゃだけど)と驚きました。尾びれをユラユラ、連動して丸い胴はクネクネ、機械仕掛けなんですけど、自らの命があるように見えるから不思議。だけど、水から引き上げると、ただのおもちゃに戻ります。

瞳が昭和の少女漫画っぽい。